鉄は自然界では
酸化鉄として存在します。
そこから酸素をとり、炭素をあわせたものが、普段使われる鉄です。
鉄は含まれる
炭素の量で性質が大きく変わります。
鋼(ハガネ)
■炭素量がおおよそ2%以下
■鋼は溶けにくいので叩き延ばして形にします。
■鍛えて硬く粘り強く、薄くしても使えます。
銑(ズク)
■炭素量がおおよそ2%以上
■銑(ズク)は、溶けやすいので型に流して成形します。
■ある程度の厚みは必要ですが、複雑な形も作れます。
まず銑(ズク)をつくり、精錬して炭素量を調節したり、他の元素を加えて刃物となる鋼(ハガネ)が作られます。
「ヤスキ」と地名が付くのは、日立金属(株)が安来市で工場を創設し、鋼を作り始めましたのでその地名をとって
「ヤスキハガネ」と名づけられました。
かつて中国山地で採れる純度の高い砂鉄から
“たたら製法”で玉鋼に製錬されていた伝統をしっかりと受け継いでおります。
日立金属では、「
青紙、
白紙、
黄紙」という名称をつけています。
特に青紙、白紙は、高級な刃物に使われます。
また、炭素の量に応じて
一号〜三号までの種類に分かれています。
白紙二号に
タングステンと
クロムを混ぜたものが青紙二号になります。
白紙二号に炭素を加えると白一になり、青紙二号に炭素を加えると青一になります。
白紙一号
白紙一号は、鋼材自体は珍しくないのですが、この鋼材が持つ本当の価値を出せる包丁職人が堺でも数人と少なく、製造本数が限られております。
白紙に少量のタングステン(硬度に関与)と少量のクロム(靭性に関与)を加える。
砂鉄系原料。
刃物鋼として特別に作られた不純物の少ない炭素鋼。
クロムを含まない為、錆びやすい。
製造工程は大変難しく、焼入れの際、純度の高い白紙は効果が出る温度帯が非常に狭く、最適な温度から急冷しなければ完全な焼入れにならず、硬さが出ません。
この行程は大変難しく職人の腕のみせ所になります。
硬度のある白鋼は砥石で鋭利な刃がつき易く、青鋼に比べると研ぎやすいので、料理人の間でも一般的に使われている包丁です。
半分が砂鉄系原料の炭素鋼。
クロムを含まないため、錆びやすい。
1号3号5号でクロムの含有率が違うため、特性が異なります。
特に、3号は錆びにくく、よく切れ扱いやすいため、和包丁によく使われています。
また、研いでも使うことができます。
2種類の金属を重ね合わせ、鍛造の過程で何度も折りたたみ、たたいてのばして作るため、独特の金属の層が模様となっています。
スウェーデンのある鉱山から取れた鉱石から得られた鋼が錆びにくいことに気がつき、それを分析したところクロムを9%含んでいることがわかりました。
それを再現したものが最初のステンレス鋼であり、その後
クロム含量を多くしてより錆びにくい合金をつくりました。
ステンレス鋼 は、含有するクロムが空気中で酸素と結合して表面に不動態皮膜をつくるために錆びにくくなっています。
刃物には、10.5%以上のクロムと炭素が入った焼入れの出来る、ステンレス刃物鋼を使います。
ステンレスといえば、スプーンや流し台に使われている18-8を思い浮かべますが、これらにはニッケルが入っています。
ニッケルが入ると、焼き入れができないので刃物にはむきません。
鋼よりはるかに錆びにくいですが、炭素が入っているので全く錆びないということはなく、酸や塩をそのままにすると還元により皮膜がこわれ錆びてきますので、手入れが必要です。